マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した調査によると、肩こりの自覚症状がある人は69.3%にもなるそうです。
もはや現代の国民病とも呼べる肩こりですが、実際は疲労や姿勢だけの問題ではなく、骨格の歪みが影響していることはあまり知られていません。
肩こりをマッサージなどの対症療法でごまかしていると、いずれ骨格の歪みが悪化して、変形性頚椎症や頚椎ヘルニアなどに進行することもありますから、できるだけ早く原因を取り除くようにしましょう。
肩がこるのは直立二足歩行の弱点
骨格が歪むと肩がこりやすいのは、人体の構造に問題があります。
人間は現存する生物で唯一、直立二足歩行で生活をしています。この形態は両手を自由に使えるなどのメリットと引き換えに、体を起こして活動している間は、ずっと背骨を地面に対して垂直に立てたまま、その一番上に頭を乗せて支え続けることになります。
人間の頭は脳が大きいせいで重たく、成人の平均で約6kgの重量があるとされますが、それを横になって寝ている時間以外は、立っていても、座っていても、歩いていても、首の上に乗せて支えないといけません。

ですから、人間の骨格はそもそも首や肩に負担が掛かりやすい、という構造的なデメリットがあります。
それでも骨格の配列が正常に保たれていれば、自分の頭くらいは支えられるようには設計されています。
しかし、骨格が歪んでしまうと、ただでさえ負担が掛かりやすい構造なのに、さらにバランスが崩れてしまうため、自分で自分の頭を支えられなくなって肩こりの症状が出てくるようになります。
首が歪むと頭の位置がずれる
この問題を、骨格の観点からもう少し詳しくご説明します。
人間の首を横から見ると、前方にカーブしているのが正常な状態です。このカーブにはさまざまな役割があるのですが、肩こりという観点から考えたときには、頭を体の中心で支えるということが挙げられます。
そこで頚椎が歪んで首のカーブがなくなると、頭を体の中心で支えることができなくなり、重心が前方に移動してしまいます。
頭の重心が前方に移動したとしても、直立二足歩行で生活をしている以上、活動中は頭を支えないわけにはいきません。

それでどうするかというと、首の後面から肩、背中の筋肉を過緊張させて、前方に移動してしまった頭を後ろに引っ張り、なんとかバランスを保とうとします。
これでなんとかバランスは取れるものの、起きている間は立っていても、座っていても、首から背中の筋肉が緊張しっぱなしになるため、筋肉の柔軟性が失われて血行も悪くなり、肩こりの症状が出てきます。
頭の重心がずれると首の負担は3倍に
首や肩に掛かる負担は、頭の重心の位置によっても違うことが分かっています。
たとえば、正常な状態を基準とした場合、首が15度前傾すると頭の重心がずれて、首に掛かる負担は二倍になると言われています。
これが仮に、首が30度前傾した場合は、首に掛かる負担は三倍になります。
正常な状態であれば頭の重さ6kgを支えるだけでよかったものが、頚椎が歪んで頭の重心が前方に移動すると、15度の前傾で二倍の12㎏、30度の前傾になると三倍の18㎏の重量を支えておかなければなりません。

頚椎が歪めば15度くらいの前傾はすぐですし、その状態でスマホやパソコンの操作、家事などでうつむくと、30度くらいは簡単に前傾してしまいます。
肩こりに悩む方は、「頭を支えているのがつらい」と訴えられることが多いのですが、12kgや18kgといえば幼稚園児くらいの重量があります。
それだけの重さの物を手も使わずに首だけで支えていると考えると、頭を支えるのがつらいのは当然ですし、肩がこるのも当然と言えるでしょう。
頚椎の歪みを矯正して頭の重心を戻しましょう
このような肩こりの症状に関しては、頚椎の歪みを矯正して、頭の重心を戻すことで根本的な改善が可能です。

失われてしまった首のカーブを元に戻せば、頭の位置が体の中心に戻って来るので、再びバランスよく支えられるようになって、首や肩の筋肉が過緊張して支える必要がなくなるからです。
こういった骨格構造の問題を無視して、マッサージで筋肉をほぐしていても、起き上がれば頭を支えるためにまた筋肉が過緊張しはじめるので、同じことの繰り返しになってしまうだけです。
肩こりは体の中の異常を知らせるサイン
肩こりは体の中で異常が発生していることを知らせるサインのようなもので、脳や心臓に問題がみられなければ、まず間違いなく頚椎が歪んでいることが原因です。
たしかに、一時的に症状が楽になるだけで良いのなら、マッサージを受けたりするだけでも、筋肉がほぐれて肩こりは軽くなるでしょう。
しかし、マッサージのようなその場しのぎの対症療法を繰り返していると、その間にも少しずつ骨格の歪みが悪化していく、ということは知っておかなければなりません。

骨格の歪みが悪化していった結果、変形性頚椎症や頚椎ヘルニアといった、さらに強い症状や腕のしびれをともなう疾患へと進行してしまうことがあるからです。
肩こりと頚椎症や頚椎ヘルニアは、別物だと思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし、頚椎症や頚椎ヘルニアは別物ではなく、肩こりが悪化していった延長上に存在するものですから、症状が軽度なうちに治療をはじめるようにしてください。
まとめ
ここまでお話ししてきたように、人体の構造上、そもそも首や肩には負担が掛かりやすくなっています。
とくに現代人は、仕事、家事、勉強、スマホ、ゲームなどで手元を見ている姿勢が多く、首を前傾している時間が長くなりがちです。
その結果、約700万年前に人類が直立二足歩行を始めたときには、想定していなかった負担が首や肩に掛かっています。
だからと言って肩こりを抱えたままでは、心身ともにストレスがかかって日常のパフォーマンスは低下しますし、将来的な頚椎症や頚椎ヘルニアのリスクを伴います。
ですので、慢性的な肩こりでお困りの場合は、すぐに骨格の歪みを確認するようにしてください。