首の変形はなぜ起こる?構造的な観点から解説する変形性頚椎症

慢性的な肩こりや首の痛みを放置していると、腕がしびれてくることがあります。

そして、慌てて病院で首のレントゲンを撮影したら、変形性頚椎症と診断されるケースも少なくありません。

変形性頚椎症は一般的に、加齢による変化が原因だとされますが、じつはそれだけではなく頚椎の歪みが大きく影響していますので、早めに骨格の状態を確認するようにしてください。

変形性頚椎症について

変形性頚椎症とは、頚椎(首の骨)や椎間板などの変性によって、首の痛みや肩こりが出てくる疾患です。

40歳以降から増え始めてくるため、病院では加齢性変化として説明されることが多いでしょう。

しかし、「歳のせい」で済ませてそのまま放置していると、変形が進行して首の骨に骨棘(こつきょく)というトゲ状の隆起が形成されます。

骨棘が神経を圧迫し始めると、腕のしびれなどの神経症状が現れてきますので、できるだけ早く頚椎の変形を食い止めることが大切です。

骨棘の形成による神経症状

変形性頚椎症の特徴的な所見は、レントゲンやMRIなどの画像診断で、骨棘というトゲ状の骨増殖が確認できることでしょう。

首には脳から伸びる脊髄や、その脊髄から枝分かれして腕に向かう腕神経叢といった、重要な神経がたくさん集まっています。

したがって、骨棘が脊髄や腕神経叢に当たって圧迫するようになれば、腕のしびれが出てくることになります。

しびれる場所や強さは骨棘ができる位置や大きさによりますが、左右どちらかの腕にしびれが出ているようなら、腕神経叢を圧迫している頚椎症性神経根症。

両腕にしびれが出ているようなら、中枢神経である脊髄が圧迫されている可能性が高く、頚椎症性脊髄症と呼ばれるようになります。

そして、神経症状が強くなると首の痛みや腕のしびれだけでは収まらず、指先の感覚が鈍くなって細かい動作が難しくなったり、握力が低下して物をつかみにくくなったりと、仕事や日常生活にも支障が出てくることになります。

頚椎が変形する理由

冒頭でお話したように、頚椎が変形する理由は加齢による変化で片付けられがちですが、実際は骨格の歪みが影響していますので、これについて詳しく解説します。

まず初めに、首の痛みや肩こりを訴える人が多いのは、人間の骨格の構造が影響しています。

人間は現存する生物で唯一、直立二足歩行で活動をしています。

頚椎のカーブ

この形態は両手を自由に使えるなどのメリットと引き換えに、体を横にして寝ている時間以外は、立っていても、座っていても、歩いていても首の上に頭を乗せて支えておかなければなりません。

人間の頭は重たく、成人の平均で約6㎏の重量があるとされているので、2Lのペットボトル3本分の重さが首の上に乗っている計算です。

それを寝ている時間以外は、毎日十何時間も首だけで支えていることになりますから、人間の首はもともと負担が掛かりやすい、という構造的な欠陥が存在します。

首の負担を分散する生理的弯曲

しかし、人間の骨格には自分の頭を支えられるだけの工夫もされています。

それが生理的弯曲と呼ばれるもので、通常、人間の首を横から見ると、前方にカーブを描いたアーチ構造になっているのが正常な状態です。

アーチ構造は耐荷重に優れるという特性がありますので、このカーブで頭の重みが一か所に集中しないように、七つある首の骨に均等に負担を分散するようになっています。

ところが、骨格が歪んでこのカーブがなくなると、首に掛かる頭の重みを分散できなくなり、歪んでいる場所に荷重が集中するようになってしまいます。

この状態で仕事や家事などで首に負担を掛けていると、ますます歪んでいる場所に掛かる負担が大きくなるため、首の痛みや肩こりも強くなってくるわけですね。

そして、負担が掛かっている骨は慢性的に関節炎を繰り返し、炎症反応によって骨が破壊されていくため、変形が起こって骨棘が形成されていきます。

頚椎の変形が加齢だけでは説明できない理由

頚椎の変形が加齢だけの問題だとは言い切れないというのは、首全体における骨棘の位置や数を考えると分かりやすいでしょう。

ご自身のレントゲンを見てもらえば分かるのですが、加齢で頚椎が変形しているとは言っても、一か所か二か所だけ他と比べて著しく変形していることがほとんどです。

でも、本当に加齢だけの問題なら、すべての骨が均等に変形していないと辻褄が合わないですよね?

もちろん、加齢の影響がゼロだとは言いませんが、一部の骨だけ極端に変形が進んでいるということは、その部分にだけ他とは違う大きな負担が掛かっていたということです。

構造的な観点から考える変形性頚椎症の改善策

このような問題に対して、痛み止めの薬やマッサージのような、その場しのぎの対症療法を続けていたとしましょう。

骨格の歪みという構造的な問題が解消していないのですから、骨の変形が進んでいくだけです。

そこで当院では、このような骨格の歪みによって起こる頚椎の問題に対して、その配列を矯正していくことで対応していきます。

頚椎症性神経根症のプレポスレントゲン

歪んでいる頚椎を矯正してカーブが戻れば、もういちど頭の重みを分散して支えられるようになり、首に掛かっていた負担が解消して、首の痛みや肩こりも改善します。

また、首のカーブが回復することで骨が正しい位置に戻り、神経の圧迫が和らいで腕のしびれも改善していくことでしょう。

首に掛かっていた負担が解消すれば、関節の炎症も鎮まりますから、骨の変形の進行を抑えられるようにもなります。

骨棘が隣の骨に届くまでに矯正をしましょう

ただし、骨の変形は不可逆ですから、一度できてしまった骨棘が小さくなることはありません。

そして、一定以上骨棘が大きくなると隣の骨まで到達して、骨同士が癒合してしまうことがあります。

癒合して骨がくっついてしまったら、いくら矯正をしても位置や角度が変わらないため、首のカーブも元には戻りません。

そのため、レントゲン分析の結果、骨が癒合していたら矯正をお断りすることになります。

これは「原因は分かったけど解決策がない」という状況ですから、それこそこの先ずっとその場しのぎの対症療法を繰り返すしかなくなります。

薬やマッサージで保存療法をおこなっていると言えば聞こえはよいですが、骨格が歪んだままなら悪化するのを指をくわえて待っているだけです。

首の痛みや腕のしびれで病院の診察を受けて、骨の隙間が狭くなっていると言われたことがある、変形性頚椎症だと診断されたことがある、ということでしたらすでに骨の変形が始まっている証拠です。

手遅れになる前に、できるだけ早く骨格の歪みを確認するようにしてください。

まとめ

首の痛みや腕のしびれが強くなると、どうしても症状に意識がいってしまうかもしれませんが、それはあくまでも表面的な結果です。

首の骨が変形して神経を圧迫するようになるのは、頚椎の歪みが原因になっていることが多いですから、改善の余地がある間に骨格の歪みを確認するようにしてください。